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Download 1 「フリー」って、どういうこと?
2 木下 達也
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5 フリーソフトウェアとは
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7 Debianはフリーソフトウェアで構成されたオペレーティングシステムです。
8 ここで言う「フリー」とは「無料」ではなく「自由」を意味しています。
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10 Free Software Foundation (FSF)による『フリーソフトウェアの定義』
11 では次のように説明されています。
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13 「フリーソフトウェア」のフリーとはそのソフトウェアのユーザに
14 与えられる4種類の自由を意味しています。
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16 * 目的を問わず、プログラムを実行する自由(第0の自由)。
17
18 * プログラムがどのように動作しているか研究し、そのプログラムに
19 あなたの必要に応じて修正を加え、採り入れる自由(第1の自由)。
20 ソースコードが入手可能であることはこの前提条件となります。
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22 * 身近な人を助けられるよう、コピーを再頒布する自由(第2の自由)。
23
24 * プログラムを改良し、コミュニティ全体がその恩恵を受けられるよう
25 あなたの改良点を公衆に発表する自由(第3の自由)。ソースコードが
26 入手可能であることはここでも前提条件となります。
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28 (http://www.gnu.org/philosophy/free-sw.ja.html)
29
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31 著作権とライセンス
32
33 著作物には、基本的に著作者に対して著作権が発生しており、著作物を
34 変更したりコピーして配ったりするには、著作者からの許可(ライセンス)
35 が必要になります。
36
37 フリーかどうかを判定する際には、変更や配布が許可されているか、
38 それらに付随する制約はどうか、といった点を確認します。
39
40 そのほかに、特許、商標など個別の事情についても検討します。
41
42
43 Debianフリーソフトウェアガイドライン
44
45 ある著作物がフリーかどうか、Debianの構成要素として適しているか
46 どうかを判定する際の基準、それがDebianフリーソフトウェアガイド
47 ライン(DFSG)です。
48
49 1. 自由な再配布
50 2. ソースコード
51 3. 派生ソフトウェア
52 4. 原作者によるソースコードの整合性維持
53 5. すべての個人、団体の平等
54 6. 目標分野の平等
55 7. ライセンスの配布
56 8. ライセンスはDebianに限定されない
57 9. ライセンスは他のソフトウエアを侵害しない
58 10. フリーなライセンスの例
59
60 (http://www.debian.org/social_contract#guidelines)
61
62 DFSGの各条項について簡単に説明します。
63
64 1. 自由な再配布 (Free Redistribution)
65
66 有償・無償を問わず、別途の許可を必要とすることなく、プログラム
67 を複数まとめて配布できます。
68
69 2. ソースコード (Source Code)
70
71 ソースコード(変更に適した形式)が必要です。実行形式だけでなく
72 ソースコードでも配布できます。
73
74 3. 派生ソフトウェア (Derived Works)
75
76 同様のライセンスで変更版を配布できます。
77
78 4. 原作者によるソースコードの整合性維持
79 (Integrity of The Author's Source Code)
80
81 変更版のソースコードを配布する場合に、元のソースコードと
82 差分(パッチ)という形式のみ許可という制約は許容します。
83 ただし非推奨です。
84
85 5. すべての個人、団体の平等
86 (No Discrimination Against Persons or Groups)
87
88 いかなる個人・団体も差別せずに許可します。
89
90 6. 目標分野の平等
91 (No Discrimination Against Fields of Endeavor)
92
93 商用・非商用など、用途を制限しません。
94
95 7. ライセンスの配布
96 (Distribution of License)
97
98 ライセンスは、再配布されたすべての人々に、別途の許可を
99 必要とすることなく適用されます。
100
101 8. ライセンスはDebianに限定されない
102 (License Must Not Be Specific to Debian)
103
104 Debianの一部としてのみの許可ではなく、他のシステムにも
105 適用できるようにします。
106
107 9. ライセンスは他のソフトウエアを侵害しない
108 (License Must Not Contaminate Other Software)
109
110 たとえば、同じ媒体で配布されるソフトウエアすべてがフリーで
111 あることを要求しないようにします。
112
113 10. フリーなライセンスの例 (Example Licenses)
114
115 GNU General Public License (GPL), BSD License, Artistic License
116 が例として挙げられています。
117
118
119 オープンソースの定義
120
121 Open Source Initiative (OSI)による『オープンソースの定義』(OSD)は
122 DFSGを元に作られました。何度か改訂されていますが、現状でも内容は
123 DFSGとほぼ同等のものです。
124
125 ここでは、一見して異なるOSD第10条についてのみ説明します。
126
127 10. ライセンスは技術中立的でなければならない
128
129 (http://opensource.jp/osd/osd-japanese.html)
130
131 たとえば、GUI環境で「同意する」ボタンを押すことが必須であっては
132 ならない、ということになります。内容としてはDFSG/OSDの第7条に
133 含まれているものとも言えそうですが、OSDでは、いわゆるクリック
134 ラップについて、この条項で特に注意を促しています。
135
136
137 コピーレフト
138
139 コピーレフトとは、著作物やその変更版について、フリーであることを
140 要求するための方法のことです。
141
142 GNU GPLは代表的なコピーレフトライセンスです。GNU GPLで配布される
143 ソフトウェアは、その変更版の配布についてもGNU GPLが適用され、
144 フリーソフトウェアであり続けます。
145
146 著作物全体への適用が「弱い」コピーレフトライセンスもあります。
147 たとえば、GNU Lesser General Public License (LGPL)で配布される
148 ライブラリは、リンクするプログラム全体についてはコピーレフトが
149 適用されません。そのほかに、Mozilla Public License (MPL)、
150 Eclipse Public License (EPL)、Common Development and
151 Distribution License (CDDL)など、ファイル・モジュール単位での
152 コピーレフトライセンスもあります。
153
154
155 ライセンスの互換性
156
157 複数の著作物を組み合わせて一つの著作物にする場合、それぞれの
158 ライセンスによる要求が矛盾しないかどうか、互換性が問題になる
159 ことがあります。
160
161 たとえば、CDDLではGNU GPLとは違った要求をしているので、
162 GNU GPLで配布されるソフトウェアとCDDLで配布されるソフトウェア
163 を組み合わせた著作物は配布できません。
164
165 ライセンスの非互換を回避するには、複数のライセンスを適用する
166 (デュアルライセンス)、例外条項を設ける、単純で何でも許可する
167 ようなライセンスにする、といった方法があります。
168
169
170 ASPループホール
171
172 GNU GPLには、アプリケーションサービスプロバイダ(ASP)の抜け穴
173 (loophole)が存在することが知られています。
174
175 手元のコンピュータではなく「あちら側」のコンピュータで実行される
176 ウェブアプリケーションの場合、そのウェブアプリケーションが
177 GNU GPLで配布されたソフトウェアを含んでいたとしても、ネットワーク
178 ユーザーにソースコード込みで再配布されるわけではありません。
179
180 その抜け穴をふさぐためのライセンスがGNU Affero General Public
181 License (AGPL)です。ネットワークユーザーへのソースコード提供を
182 求める条文がGNU GPLに加えられたものになっています。
183
184
185 自由と協力
186
187 なぜソフトウェアをフリーにするのでしょうか。フリーソフトウェア、
188 オープンソースの関係者それぞれに様々な思惑があることと思いますが、
189 ここでは一つの考えを挙げておきます。
190
191 個人の自由を促進し人々が協力し合うこと、自分のためにみんなのため
192 に実践できること、それがソフトウェアに関することなのであれば、
193 フリーソフトウェアがよく似合います。
194
195 Debianプロジェクトはフリーソフトウェアを強く支持しています。
196
197 Happy Hacking!
198
199
200 参考資料
201
202 * フリーとは何だろう? あるいはフリーソフトウェアとは何を意味するのか?
203 http://www.debian.org/intro/free.ja.html
204 http://www.debian.org/intro/free.en.html
205
206 * フリーソフトウェアの定義
207 http://www.gnu.org/philosophy/free-sw.ja.html
208 http://www.gnu.org/philosophy/free-sw.html
209
210 * Debian 社会契約 / Debian フリーソフトウェアガイドライン (DFSG)
211 http://www.debian.org/social_contract.ja.html
212 http://www.debian.org/social_contract.en.html
213
214 * Debian -- ライセンス情報
215 http://www.debian.org/legal/licenses/index.ja.html
216 http://www.debian.org/legal/licenses/index.en.html
217
218 * DFSG and Software License FAQ (Draft)
219 http://people.debian.org/~bap/dfsg-faq.html
220
221 * オープンソースの定義
222 http://opensource.jp/osd/osd-japanese.html
223 http://opensource.org/docs/osd
224
225 * Open Source Licenses
226 http://opensource.org/licenses/index.html
227
228 * コピーレフトって何?
229 http://www.gnu.org/copyleft/copyleft.ja.html
230 http://www.gnu.org/copyleft/copyleft.html
231
232 * さまざまなライセンスとそれらについての解説
233 http://www.gnu.org/licenses/license-list.ja.html
234 http://www.gnu.org/licenses/license-list.html
235
236 * GNU GPLに関して良く聞かれる質問
237 http://www.gnu.org/licenses/gpl-faq.ja.html
238 http://www.gnu.org/licenses/gpl-faq.html
239
240 * Debian について
241 http://www.debian.org/intro/about.ja.html
242 http://www.debian.org/intro/about.en.html
243
244
245 Copyright (C) 2011 Tatsuya Kinoshita
246
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249 either commercially or noncommercially.
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