「フリー」って、どういうこと? 木下 達也 フリーソフトウェアとは Debianはフリーソフトウェアで構成されたオペレーティングシステムです。 ここで言う「フリー」とは「無料」ではなく「自由」を意味しています。 Free Software Foundation (FSF)による『フリーソフトウェアの定義』 では次のように説明されています。 「フリーソフトウェア」のフリーとはそのソフトウェアのユーザに 与えられる4種類の自由を意味しています。 * 目的を問わず、プログラムを実行する自由(第0の自由)。 * プログラムがどのように動作しているか研究し、そのプログラムに あなたの必要に応じて修正を加え、採り入れる自由(第1の自由)。 ソースコードが入手可能であることはこの前提条件となります。 * 身近な人を助けられるよう、コピーを再頒布する自由(第2の自由)。 * プログラムを改良し、コミュニティ全体がその恩恵を受けられるよう あなたの改良点を公衆に発表する自由(第3の自由)。ソースコードが 入手可能であることはここでも前提条件となります。 (http://www.gnu.org/philosophy/free-sw.ja.html) 著作権とライセンス 著作物には、基本的に著作者に対して著作権が発生しており、著作物を 変更したりコピーして配ったりするには、著作者からの許可(ライセンス) が必要になります。 フリーかどうかを判定する際には、変更や配布が許可されているか、 それらに付随する制約はどうか、といった点を確認します。 そのほかに、特許、商標など個別の事情についても検討します。 Debianフリーソフトウェアガイドライン ある著作物がフリーかどうか、Debianの構成要素として適しているか どうかを判定する際の基準、それがDebianフリーソフトウェアガイド ライン(DFSG)です。 1. 自由な再配布 2. ソースコード 3. 派生ソフトウェア 4. 原作者によるソースコードの整合性維持 5. すべての個人、団体の平等 6. 目標分野の平等 7. ライセンスの配布 8. ライセンスはDebianに限定されない 9. ライセンスは他のソフトウエアを侵害しない 10. フリーなライセンスの例 (http://www.debian.org/social_contract#guidelines) DFSGの各条項について簡単に説明します。 1. 自由な再配布 (Free Redistribution) 有償・無償を問わず、別途の許可を必要とすることなく、プログラム を複数まとめて配布できます。 2. ソースコード (Source Code) ソースコード(変更に適した形式)が必要です。実行形式だけでなく ソースコードでも配布できます。 3. 派生ソフトウェア (Derived Works) 同様のライセンスで変更版を配布できます。 4. 原作者によるソースコードの整合性維持 (Integrity of The Author's Source Code) 変更版のソースコードを配布する場合に、元のソースコードと 差分(パッチ)という形式のみ許可という制約は許容します。 ただし非推奨です。 5. すべての個人、団体の平等 (No Discrimination Against Persons or Groups) いかなる個人・団体も差別せずに許可します。 6. 目標分野の平等 (No Discrimination Against Fields of Endeavor) 商用・非商用など、用途を制限しません。 7. ライセンスの配布 (Distribution of License) ライセンスは、再配布されたすべての人々に、別途の許可を 必要とすることなく適用されます。 8. ライセンスはDebianに限定されない (License Must Not Be Specific to Debian) Debianの一部としてのみの許可ではなく、他のシステムにも 適用できるようにします。 9. ライセンスは他のソフトウエアを侵害しない (License Must Not Contaminate Other Software) たとえば、同じ媒体で配布されるソフトウエアすべてがフリーで あることを要求しないようにします。 10. フリーなライセンスの例 (Example Licenses) GNU General Public License (GPL), BSD License, Artistic License が例として挙げられています。 オープンソースの定義 Open Source Initiative (OSI)による『オープンソースの定義』(OSD)は DFSGを元に作られました。何度か改訂されていますが、現状でも内容は DFSGとほぼ同等のものです。 ここでは、一見して異なるOSD第10条についてのみ説明します。 10. ライセンスは技術中立的でなければならない (http://opensource.jp/osd/osd-japanese.html) たとえば、GUI環境で「同意する」ボタンを押すことが必須であっては ならない、ということになります。内容としてはDFSG/OSDの第7条に 含まれているものとも言えそうですが、OSDでは、いわゆるクリック ラップについて、この条項で特に注意を促しています。 コピーレフト コピーレフトとは、著作物やその変更版について、フリーであることを 要求するための方法のことです。 GNU GPLは代表的なコピーレフトライセンスです。GNU GPLで配布される ソフトウェアは、その変更版の配布についてもGNU GPLが適用され、 フリーソフトウェアであり続けます。 著作物全体への適用が「弱い」コピーレフトライセンスもあります。 たとえば、GNU Lesser General Public License (LGPL)で配布される ライブラリは、リンクするプログラム全体についてはコピーレフトが 適用されません。そのほかに、Mozilla Public License (MPL)、 Eclipse Public License (EPL)、Common Development and Distribution License (CDDL)など、ファイル・モジュール単位での コピーレフトライセンスもあります。 ライセンスの互換性 複数の著作物を組み合わせて一つの著作物にする場合、それぞれの ライセンスによる要求が矛盾しないかどうか、互換性が問題になる ことがあります。 たとえば、CDDLではGNU GPLとは違った要求をしているので、 GNU GPLで配布されるソフトウェアとCDDLで配布されるソフトウェア を組み合わせた著作物は配布できません。 ライセンスの非互換を回避するには、複数のライセンスを適用する (デュアルライセンス)、例外条項を設ける、単純で何でも許可する ようなライセンスにする、といった方法があります。 ASPループホール GNU GPLには、アプリケーションサービスプロバイダ(ASP)の抜け穴 (loophole)が存在することが知られています。 手元のコンピュータではなく「あちら側」のコンピュータで実行される ウェブアプリケーションの場合、そのウェブアプリケーションが GNU GPLで配布されたソフトウェアを含んでいたとしても、ネットワーク ユーザーにソースコード込みで再配布されるわけではありません。 その抜け穴をふさぐためのライセンスがGNU Affero General Public License (AGPL)です。ネットワークユーザーへのソースコード提供を 求める条文がGNU GPLに加えられたものになっています。 自由と協力 なぜソフトウェアをフリーにするのでしょうか。フリーソフトウェア、 オープンソースの関係者それぞれに様々な思惑があることと思いますが、 ここでは一つの考えを挙げておきます。 個人の自由を促進し人々が協力し合うこと、自分のためにみんなのため に実践できること、それがソフトウェアに関することなのであれば、 フリーソフトウェアがよく似合います。 Debianプロジェクトはフリーソフトウェアを強く支持しています。 Happy Hacking! 参考資料 * フリーとは何だろう? あるいはフリーソフトウェアとは何を意味するのか? http://www.debian.org/intro/free.ja.html http://www.debian.org/intro/free.en.html * フリーソフトウェアの定義 http://www.gnu.org/philosophy/free-sw.ja.html http://www.gnu.org/philosophy/free-sw.html * Debian 社会契約 / Debian フリーソフトウェアガイドライン (DFSG) http://www.debian.org/social_contract.ja.html http://www.debian.org/social_contract.en.html * Debian -- ライセンス情報 http://www.debian.org/legal/licenses/index.ja.html http://www.debian.org/legal/licenses/index.en.html * DFSG and Software License FAQ (Draft) http://people.debian.org/~bap/dfsg-faq.html * オープンソースの定義 http://opensource.jp/osd/osd-japanese.html http://opensource.org/docs/osd * Open Source Licenses http://opensource.org/licenses/index.html * コピーレフトって何? http://www.gnu.org/copyleft/copyleft.ja.html http://www.gnu.org/copyleft/copyleft.html * さまざまなライセンスとそれらについての解説 http://www.gnu.org/licenses/license-list.ja.html http://www.gnu.org/licenses/license-list.html * GNU GPLに関して良く聞かれる質問 http://www.gnu.org/licenses/gpl-faq.ja.html http://www.gnu.org/licenses/gpl-faq.html * Debian について http://www.debian.org/intro/about.ja.html http://www.debian.org/intro/about.en.html Copyright (C) 2011 Tatsuya Kinoshita This work comes with ABSOLUTELY NO WARRANTY. Unlimited permission is granted to use, copy and distribute it, with or without modification, either commercially or noncommercially.